ぼくの夢って何だろう?
昔は何になりたかったか。っていう話は、その時に好きだったものに因るものだと思う。
ぼくの幼稚園の頃の夢は"サッカー選手"だったし、小学校の頃は"マラソン選手"だった。一時、"ガソリンスタンドの店員"になりたいと思っていた時期もあったが、ガソリンの匂いが好きだったという、今思えばちょっとヤバい理由だ。
中学校の頃からの夢は"薬剤師"だった。
薬が好きだったわけではない。病気がちで良く薬を飲んでいたわけでもない。理科は好きだったし、薬を扱うのは漠然とカッコいい、と思ったけど。でも、そうじゃない。
親に勧められたからだ。
親の立場になって思うことだが、"薬剤師"という"夢"は"正解"だ。
安泰。
まさにそれに尽きる。
結局、ぼくはその"夢"を叶えることはできなかったわけだけど。
親の期待に応えたかった。
テストで悪い点を取るとがっかりされるのが嫌だったから、必死で勉強した。
ぼくの夢は"薬剤師"だと、卒業アルバムにも書いた。
薬学部の大学に進学したいと、親に伝えた。
こうしたら親は喜んでくれる。
怒られずに済む。
全部パフォーマンスだった。
口に出していると、いつの間にか心から思っているように錯覚してしまう。
ぼくの夢は、"ぼくの夢"じゃなかった。
でも、これは親のせいでもなんでもなく、自分の脳みそが機能を停止していただけだ。親の意向に背いてまで、自分がなりたいものを探そうとしていなかっただけだ。
ぼくは薬剤師にはなれなかったけど、薬の開発に携わる仕事に就いている。仕事自体は楽しい。でも、ふと冷静になったとき、自分は何になりたかったんだろうと思う。
30歳直前に、ぼくは将来の夢を改めて考えている。
まぁ。このエッセイがその延長線上ではあるんだけど。