自分の悩みにマジメに答えてみることにした

東京でサラリーマンをしながら、エッセイを書いています。たまに書評ブログも。「3分間であなたに新しい視点をひとつだけ増やす」をコンセプトにほぼ毎日更新中。

"メタボリズム"って何?

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 独身時代に良く展覧会に行っていた。東京モーターショーとか、美術展とか、写真展とか。特別そうゆうものに詳しい、とかそんなことはないんだけど、新しいものに触れた時の興奮が好きだった。
 今から7年前、地下鉄に貼ってあった美術展の広告にあっという間に心を奪われ、その日の夜、六本木ヒルズにある森美術館に向かった。

  「メタボリズムの未来都市展」と書かれた、一際大きなポスターが目に入る。
 入ってすぐ、ぼくは純粋に「未来都市」というだけに言葉に奪われていたが故に、「期待外れだ」と思ってしまった。
 高層ビルが立ち並び、透明のチューブが何本も走り、その中をタイヤのない宙に浮いた車が高速で走るような。子供の頃描いていた「未来都市」と大きくかけ離れた幾何学的な模型に、正直のところ、少しがっかりしていた。

 建築学の考え方として「メタボリズム」がある。
 メタボ、メタボなんていうが、単にデブが住むために頑丈に作ろう、とかそんな話ではない。
 まぁ、その時のぼくは当然知らなかったから、がっかりしていたわけだけど。

 ざっくりといえば、「環境や技術発展に合わせて変化させることを前提に建物を作りましょう」という考え方らしい。
 生物学的には「代謝」を意味する単語だ。生物が食べ物とかを体内に取り込み、生命維持をする。
 建物も、人口や科学技術など、そんなものを取り込みながら、建築物としての"生命"を維持していく、というイメージを持った。

 美術展を見ながら、ぼくはその合理性に感動した。
 作った時点で100%とするのではなく、"伸びしろ"をあえて残すという発想に触れ、「メタボリズム」は広く生かせると思ったことを良く覚えている。
 ディズニーランドは「未完のテーマパーク」と表現されるが、ここにも「メタボリズム」が生きているのだろう。
 色々な考えが頭に湧き、興奮しながらぼくは帰路に着いた。

 その日はハロウィンも間近に迫った土曜日だった。

 メタボリズムとの出会いに感動を覚えながら、ぼくは完成しきっているビル群を見て、合理的な未来都市を想像していた。
 千代田線「乃木坂駅」を目指しながら、街灯の少ない細い路地を歩いていたら、遠くから大きな黒い影がこちらに歩いてくるのが見えた。
 変だなぁ…、いやだなぁ…と思いながらも進んでいくと、輪郭がはっきりとしてきた。

 全身を覆う黒い布。その中には怪しく光沢を放ったものが見えた。頭部も同じく怪しい光沢を放っている。
 近づいてくる。
 デカい。190cmはありそうだ。
 真横を通り過ぎる。ぼくは息を殺した。
 ダースベーダーは何も言わず、盛り上がるバーの店内に吸い込まれていった。
 握った拳が汗で湿っていた。危うくフォースが覚醒するところだった。
 まさにトリック。トリートは持ち合わせがなかった。

 本物のダースベーダーも最期は自分の子供のために命を使った。
子を次代へと引き継ぐ。
 これも大きな意味での「メタボリズム」だな、とぼくはまた興奮していた。

 

今週のお題「ハロウィン」